朗読の楽しみ:第1回

~ことばを音にすること、文学作品を耳で楽しむことについて、一緒に考えてみませんか。~
図書館委員会企画による自由閲覧室の空間を利用した「朗読会」の開催(年1回)についてお知らせします。

第1回 宮沢賢治『よだかの星』、『雪渡り』

朗唱: たや仁子 (言語造型家)
日時: 2010年11月25日(木) 17:15~19:15
場所: 自由閲覧室
(企画:図書館委員会、進行:末松淑美)

いずれも味わい深い作品です。ことばを音にすること、文学作品を耳で楽しむことについて、一緒に考えてみませんか。

朗読の楽しみ第1回
実施を終えて

配布資料(PDF)

前略
 先日は、大変すばらしい時間をすごさせていただき、ありがとうございました。
 ことば・声の音そのものの響きや流れ、作用したり存在したりする力、その不思議に触れたいという思いから出あった言語造型の道ですが、これほどその魅力を受けとって下さる聴衆の前でできることはもうないのではないか?と思ってしまうほど、皆さんそれぞれによく聴いて下さり、深いところで互いに出あえたのではないかと思います。
 皆で少し動いた後、何人かの方に一人で読んでいただいた時は、それぞれの方が描き感じていることが声の響きになって伝わってきて、じーんとしました。
 動きから声にうつる時、もう少し動いたことを生かしやすい形でもっていけばよかったとか、自分の語りについても反省は多くありますが、(何かお気づきのことがありましたら、今後のために教えていただけるとありがたいです)自分が一番大切にしたいと思っていること(音と響き、そして出あうこと)を感じとれたことが何よりも嬉しく、参加して下さった皆様にも何か持ち帰っていただける時間であったら嬉しく思います。
 企画をして下さった図書館委員の皆様、場を整えて下さった図書館の皆様お一人おひとりにも心から感謝いたします。ありがとうございました。
 また何か機会がありましたらいつでも喜んで参ります。
 一つ山をこえると次が見えてくるもの、私自身は来年度は日本神話をテーマにしていきたいと考えています。そして、今回のような場をふやしていくこと…音楽も、ことばも、生(なま)の音の良さをもっともっと感じていきたいですね!
 では、あわただしい年末が迫ってまいりましたが、皆様お体にお気をつけて、おすごし下さい。
 またお会いできる機会があれば嬉しいです。

草々

国立音楽大学
 図書館委員会、図書館の皆様へ

2010年11月28日
たや仁子

 去る11月25日(木)の夕方、図書館2階の自由閲覧室にて、《朗読の楽しみ》が開催されました。映画やアニメで育ち、メールで対話し、読書はしても音読はあまりしない学生たち。文学作品の「音」の側面も楽しんでほしいというのが、朗読会を企画しようと思い立った理由です。文学と音楽の親しい関係はよく知られていますが、その表現媒体である「ことば」もまた、「音」という点で音楽と似たところがあります。それを学生に体験してもらうために、第1回は宮沢賢治の力を借りることにしました。賢治が描く独特のことばの世界には、多くのファンがいます。ことばの「音」でイメージを描く言語造型家のたや仁子(よしこ)さんをお招きし、『よだかの星』『雪渡り』を朗唱していただきました。風景が広がり、色や手触りまで感じられそうな朗唱に、参加者は一様に熱心に聴き入っていました。舞台のような照明設備の無い閲覧室では、半分以上の人が目をつぶって聴いていました。
 二作品の間には短いワークショップをはさみ、たやさんに朗唱の方法を少しだけ伝授していただきました。少し体を動かしたあと、イメージを描いてからそれをことばに乗せる練習をしました。参加者同士および朗唱者との距離も、そのときぐっと近くなったようです。朗読会を最後まで聴いた参加者は、熱心にアンケートを書いてくれました。多くの学生は、たやさんと話してから、「また企画してください!」と言って帰って行きました。アンケートを読んでみると、これまであまり朗読を聴く機会がなかったと書いている人が多く、声に出すことによって作られるイメージや映像に、それぞれ多くのことを感じたようです。「音を聴いて情景をうかべるという点で、音楽と共通していると思う」「世界の作り出し方に感動した」などの感想は、ふだん表現に関わっている学生ならではのものかもしれません。
 私自身も思いがけぬ発見をしました。それは、ブラウジングルームに展示された宮沢賢治関連の資料です。私たちの図書館に日本文学の貴重な資料がこんなにあったのか、という嬉しい驚きと同時に、並んでいる図書や楽譜からは宮沢賢治の世界と音楽との深いつながりが明瞭に伝わってきます。やはり、朗読会と図書館の相性は最高だと確信しました。朗読で感性を磨き、展示で知識を豊かにする。ちょうど、素晴らしい音楽会の帰り道、プログラムを読みながら音楽を反芻するような幸福感がありました。これからもぜひ、《朗読の楽しみ》が続くことをと心から願っています。

末松淑美

回収数:16(内訳:教員2、学部生10、院生0、卒業生2、その他1、不明1)

1.本日の朗読会についての感想
  • 言葉がうつし出す情景のすばらしさに心打たれました。
  • たやさんのさりげない飾らない語りが素晴しいです。
  • 身体を動かしてイメージをふくらませることはすごく刺激的で楽しかったです。
  • 朗読は小さいころ幼稚園のイベントで聞いたきり、全く接する機会がなかったのでともてなつかしく、そしてうれしく思いました。
  • とても耳になじむ聴きやすい声でした。みんなで朗読するために色々動いたりするのが面白かったです。
  • このような朗読会に来たのは初めてだったので、とても新鮮な体験でした。文章を読み書きすることでなんとか生き長らえている人間なのですが、ここまで一文に込められた響きや意味について細かく考えたことがなかったなあと反省しています。
  • 世界のつくり出し方に感動しました。
    賢治の世界にひきこまれました。
    真近でたや先生の朗読をみられてとても勉強になりました。
  • 朗読をきく機会があまりないので、大学でこのような会がひらかれて、とても貴重な体験ができました。
  • 宮澤賢治の世界へのアプローチの仕方にふれることが出来ました。
  • 宮澤賢治の作品が、中でも「よだかの星」が大好きなので聴くことができて嬉しかったです。朗読によってより世界が濃厚になるように思います。私は1人で本とむきあって世界にひたることが好きですが、朗読のよさも感じることができました。
  • 授業があったので、「雪渡り」からしか参加できなかったのですが、すごくすごく楽しかったです。知らない人たちと集まって、同じものを体験できる喜び、そして、ただ読むだけでなく、声に出してイメージする楽しさを感じました。参加できてよかったです。
  • このような会があることを知らず、たまたま図書館へ来たら看板が目に止まり[ママ]、本当に参加できて良かったです。とても勉強になりました。
  • 音を聴いて、情景をうかべるという点で、音楽と共通していると思います。
  • とても良い時間を過ごすことができました。
  • とても映像がはっきりと見えてきてひきこまれました。
    「雪渡り」は小学校の教科書で読み、とてもなつかしかったです。
  • 文章から伝わるイメージの捉え方などがよく分かってとてもためになった。
2.宮澤賢治の印象に残ったことば
  • 「堅雪かんこ、しみ雪しんこ」 キックキックキック はつらつとした響きですね。
  • キックキックキック 体で動いて感じる喜びにひたりました。
  • 「堅雪かんこ」「しみ雪しんこ」
  • リズミカルで話していても聴いていても楽しい気分になる。
  • お前は、よだかだな。
  • 言葉、というか言葉のリズム感が印象に残りました。賢治独特の言い回しや擬音(?)のもつ躍動感がすごくひき出されていたように感じました。
  • 「よだかの星」のよだかがとても印象に残りました。(言葉じゃないのですが…)
    優しく愛らしい子だと思いました。
  • 「木なんかみんなザラメを掛けたように霜でぴかぴかしています。」
  • 「雪渡り」の風景描写の感性に感動しました。
    つめたくてたいらな世界にてりつける太陽の光の中にゆりのつよい香りがにおいたつ…という表現は独特だけど分かる気がします。
  • ?前半いなかったので…
    百合の匂いのところがステキだと思いました。
  • 恥ずかしながら「よだかの星」は今日までタイトルしか知らなかったのですが、話全体の景色がすごく印象に残りました。
  • _のです。 とは、
  • オノマトペが、字や文で読むより、音で聴くと多く感じました。
  • キック キック トントン
  • 想像していくと本当に面白い作品ばかりで、子供たちの教育にもいいと思った。
3.次に聴いて見たい作家・作品
  • 八木重吉の詩
  • ゲーテ  片山敏彦
  • 銀河鉄道の夜、など幻想的なお話を聞いてみたいです。
  • 中田喜直の作品です。特に「木兎」みみずく
  • 詩を聞いてみたいです。「永けつ[ママ]の朝」など
  • 暗いシリアスな作品を。
    どうなるのか興味があります。(笑)
  • 宮澤賢治の他の作品をきいてみたいです。
    「やまなし」をぜひ…。
    古典もきいてみたいです。
  • 童話など
  • 小学校や中学校の教科書に載っている有名な作品・詩など
  • 星のおうじ[ママ]さま サンテグジュペリ 内藤かい[ママ]訳
    中原中也の詩 「サーカス」「月夜のボタン」
    風の又三郎 おきなぐさ 銀河鉄道の夜
  • 詩を聴いてみたいと思いました。
    金子みすづ[ママ]とか中原中也とか八木重吉とか茨木のり子とか……。
    外国の作品も聴いてみたいと思いました。
  • 神話なども取り挙[ママ]げていただけると嬉しいです。
  • 谷川俊太郎
  • 子ども向けのお話  落語
  • 歌曲(中田善[ママ]直等)の歌詞。木兎(みみずく)
4.その他、ご自由にお書き下さい
  • ありがとうございました。
  • ちょうどよい人数でしたね。
  • 途中からの参加でしたが、おだやかな時間を過ごさせていただきありがとうございました。次回にも期待しています。
  • 今日は本当にありがとうございました。このような機会がありましたら、また是非参加したいと思います。
  • 立って朗読されている時に右手が上下するのが気になりました。
  • とても素晴らしい会をありがとうございました。
    次回を楽しみにしています。
    もっとやってほしいです。
  • 声楽との共通点、相違点ともみえてものすごく勉強になりました。
    ぜひ続けてほしい企画です。ありがとうございました。
  • とても楽しかったです。
    ありがとうございました。
  • 楽しかったです。また企画してほしいです。図書館にも文学作品があるということを知りませんでした。音楽だけでなく、言葉に着目したこんな企画をまたやってほしいです。
  • いざ声に出して読もうとすると、「こんなに難しいのか!」と改めてびっくりしました。でも、目[ママ]読するよりも生々として楽しかったです。宮沢賢治は大好きなので、今回こういう機会があってとても嬉しく思います。
    言葉も朗読も、目の前にはないもの、目に見えないものを伝えようとすることが共通していると思いました。
  • 是非第2回も開催していただきたいです。
  • 時々、ラジオドラマを聴きます。
    朗読の映像にはない表現に感ずるものがあります。今日はライヴで体験でき、有意義でした。
  • ふだん、活字をだまって追いながら文章を読むことが多いので、耳からきいて文章を理解するというのは、また違った脳みそを使うかんじで新鮮でした。
  • 日本歌曲を勉強していく上でさらにイメージ豊かにする感情がもてる朗読会だと思いました。