今月の栞 2015年
1月
長島剛子(声楽)

KS00091


  小塩節 著
『私のゲーテ』
青娥書房 2010
   人との出会いは、その人の人生を左右する最も重要なことの一つだと思っています。今から十数年前ドイツで勉強していた頃、私は多くの人たちと出会いました。この本の著書である小塩節(おしお たかし)先生もその中の一人です。先生の暖かいお人柄、ドイツ文学・文化に対する造詣の深さ、限りない愛情に瞬く間に魅了され、帰国後も先生が教鞭を取っていらした中央大学まで1年間講義を聴講に行ったほどです。ドイツ文学者であられる先生の御専門の一つはゲーテなのですが、その講義はとてもおもしろく、私のように文学を専門に勉強していないものに取ってもわかりやすい内容でした。それ以来でしょうか、私がゲーテに興味を持つようになったのは。ゲーテ生誕250年の記念の年にはゲーテ歌曲を集めてリサイタルを開いたり、ゲーテの足跡を辿って何度か旅行をしたりもしました。ゲーテがフリーデリーケに会いに通ったというアルザス地方にあるゼーゼンハイムという小さな村や、ワイマルにあるイルム川沿いに佇む小さなガルテンハウス等、彼の歌曲を演奏するときにはいつも脳裏にその景色が浮かんできます。
 この本は先生が書かれた数多い著作の中の1冊ですが、ゲーテの詩の魅力、人間としての魅力が平易な言葉で綴られています。私は今、独語ディクションの授業を担当していますが、授業に退屈してきた学生たちが、ゲーテの多彩な女性遍歴の話を始めると急に元気になってくるのが面白く、ここぞというときの為にゲーテの面白い話をいくつか用意しています。小塩先生との出会いを通して、遠い存在だったドイツ文学が私の中で随分近い存在になりました。皆さんもこの本を読んでゲーテと親しくなりましょう!
  図書館員からひとこと