今月の栞 2014年12月 立川和男先生 (フルート)

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  中川右介著
『カラヤンとフルトヴェングラー』
幻冬舎 2007
   現在学生のみなさんにとっては、大分昔の指揮者カラヤンと名前を聞いたこともないフルトヴェングラーかもしれません。しかし、かつては帝王カラヤンとベルリンフィルの黄金コンビはクラシック音楽愛好家の誰もが知っている存在でした。さらにフルトヴェングラーはそのカラヤンより神格化された伝説の指揮者でした。この著書は、1934年から54年までのベルリンフィルの物語です。34年当時フルトヴェングラーはすでにベルリンフィルの三代目音楽監督に君臨して当代一の指揮者でした。一方カラヤンはまだ無名に近い駆け出しの指揮者でした。フルトヴェングラーに嫌われていたカラヤンが何故四代目音楽監督の座を得たのか、そこには3人目の指揮者として登場するチェリビダッケの存在が絡み合ってきます。野心に満ちた有能な青年とそれを嫉妬し画策する巨匠、この著書は音楽の世界を舞台にしていますが、歴史ドラマ、人間ドラマとして大変興味深いです。またエピソードとして挿入されたフルトヴェングラーの「ヒンデミット事件」やナチス政権との係り、戦後の非ナチ化審理、トスカニーニやユダヤ系音楽家との軋轢も見逃せません。

  図書館員からひとこと