今月の栞 2014年3月 神原雅之先生 (幼児教育学・教職科目)

KS00073


  黒柳徹子 作 ; いわさきちひろ 絵
『窓ぎわのトットちゃん』
講談社 1991
     ここで紹介する『窓ぎわのトットちゃん』は、黒柳徹子さんご自身の子ども時代、トモエ学園で過ごしたエピソードが綴られています。トットちゃんは自由奔放で、好奇心旺盛な女の子。その姿は(皆さんもテレビ等でご覧の通り)いまも健在です。戦時中の貧しくて封建的な社会の中で、自由奔放に生きた(時には変な子として映った)トットちゃんの眼は、いつもキラキラと輝き、どれほどか周囲を明るく照らしていたことか。この『窓ぎわ―』には、戦前の社会と音楽と子どもの素敵な瞬間が点描され、私たちを温かい気持ちにさせてくれる一冊です。
   お話の中には、リトミックに興じるトットちゃんの様子が語られています。その先生は小林宗作先生(1893-1963)。パリでリトミックを学び、わが国のリトミック教育の普及に尽力された先生です。ちなみに、小林先生はトモエ学園が戦争で焼失した後、国立音大に赴任(附属幼稚園長も兼務)され、くにたちの礎を築かれたお一人でもあります。
   私がこの本を手にしたのは1981年。私はくにたち卒業後、故郷に戻り、幼児のリトミック指導に悪戦苦闘していました。浅学非才な私は、思うような指導ができず悩んでいました。その原因は、技量の未熟さだけではなかった。私の心の中に一因があった―『窓ぎわの―』で描かれた小林先生の温かなまなざしに気付かされたのです。変な女の子であったトットちゃんを丸ごと受容しようとした小林先生の教育観(子ども観)・音楽観に学ぶところが大きかった。私は一人の教師として、子ども心をもった大人でありたい、と思うようになりました。本書は、私に勇気を与えてくれた一冊です。『窓ぎわのトットちゃん』は英語版もあります。皆さんもトットちゃんの世界をのぞいてみませんか。

  図書館員からひとこと