今月の栞 2014年3月 三浦徹先生 (ユーフォニアム)

KS00072


  秋山紀夫 著
『吹奏楽の歴史 : 学問として吹奏楽を知るために』
ミュージックエイト 2013
      日本の西洋音楽の歴史は、明治政府の軍楽と唱歌の導入によって始まりました。その軍楽(吹奏楽)は、1869年、横浜の妙香寺に於いて薩摩藩の武士たちと英国人の指導者ジョン・ウィリアム・フェントンによって始められました。秋山紀夫先生の新刊「吹奏楽の歴史」は、その副題にもある通り、わが国における吹奏楽のあるべき姿を筋道の立った学問的な裏付けのあるものへ導く大切な教科書です。
   〜ヨーロッパにおける吹奏楽は、冠婚葬祭や人々の暮らしになくてはならない "文化" という位置づけ。アメリカにおける吹奏楽は、学校教育の中、専門教員が指導する "教育" としての扱い。そして日本の吹奏楽は、吹奏楽コンクール中心の盛んな現象と評されます〜
   秋山先生は、「日本では、音楽大学でさえも、吹奏楽は学問や理論として学ぶのではなく、単に技術指導と表現指導に留まっている」と説かれています。「その要因のひとつに、理論として学べる吹奏楽の教科書になるような資料がないことがあげられる」とまえがきにも述べておられます。(社) 全日本吹奏楽連盟には1万4千を越える団体が登録されておりますが、うち約1万2千団体を小学校、中学、高校、大学のスクールバンドが占めています。それ以外の職場・一般バンドの構成メンバーも、ほぼ全員がスクールバンドの出身者ということができるでしょう。日本全国の吹奏楽経験人口は、すでに1千万人を越えるとも言われ、正に盛んな現象を表しています。"盛んな現象" とは、吹奏楽を好きな人たちが集まってワイワイガヤガヤと賑やかに騒いでいるということで、世の中との "つながり" や "筋道の立った指導法" に欠けていると私は思います。本著は、そういった吹奏楽理論の指導や理解の助けになるでしょう。特に、巻末の「ジョン・ウィリアム・フェントンを追って」〜日本の吹奏楽の父〜 の項は、長い年月を掛けた秋山先生の粘り強い調査が結実したものとして大いに賞賛に価するでしょう。

  図書館員からひとこと