今月の栞 2014年1月 野中映先生 (音楽学)

KS00071


  佐藤真一 著
『ヨーロッパ史学史 : 探究の軌跡』
知泉書館 2009
      『ヨーロッパ史学史』は、国立音楽大学で長く歴史の授業を担当されてこられた佐藤真一先生のご著書です。佐藤先生とは年度末に智光山公園というところへハイキングに行くのが年中行事となっていて、私にとってそれは一年のうちの大きな楽しみでもありました。春を待つ花壇の傍らや小川に沿って設けられた木道などを歩きながら、もちろん私は史学について全くの素人なのですが、殊のほか歴史が好きなので、失礼もわきまえずに『ヨーロッパ史学史』を通して好き勝手なことを述べ、それを先生は嬉しそうに聞いてくださるのが思い出となり積み重なっております。たとえば最初に挙げられているヘロドトスの『歴史』は、私が高校、大学生のころ、大著といわれるような書物を読み漁っていたにもかかわらず、さすがにこの本とは一生縁がないだろうと思っていたものなのですが、ヘロドトスの生涯と立脚点などを知るうちに俄然興味がわいてきて全巻夢中で読むことができました。この歳にしてようやくこの書と出会うきっかけが持てたわけです。さらにツキディデスの『戦史』にいたっては、ツキディデス本人が「これを読んで面白いと思うひとはすくないかもしれない」と述べているにもかかわらず、『ヨーロッパ史学史』での叙述を読むにつれヘロドトス以上に興味がわき、おかげで私はその「すくない」一人になることができました。他にも、古代から現代にいたるまで、夢中になって読める歴史書と出会うきっかけを、この本は与えてくれたのです。

  図書館員からひとこと