今月の栞 2013年11月 新藤久典先生 (教職)

KS00066


  中島敦 著
『李陵 / 山月記』
新潮社 2003
      読書というものは不思議なもので、読書を通して、まるで自分自身が直接体験したような思いにさせてくれます。これは、まさに『読書の快感』であり、この快感を与えてくれる、「私」にとっての傑作に1册でも多く出会いたくて、図書館や書店を彷徨することになります。
   一方、自分では気付かない「私」の内面を鋭く抉り出し、白日の下に曝すことも読書はもたらします。私が最も強い衝撃を受けたのは、高校生のときに国語の授業で出会った、中島敦の『山月記』です。その中に出てくる2つの言葉、「臆病な自尊心」と「尊大な羞恥心」を目にした時、「新藤、これがお前の正体だ」と、鋭い短刀を喉元に突きつけられた感じがし、急に息苦しくなり、羞恥の思いに駆られ激しく赤面し、混乱したことをまるで昨日のことのように思い出します。これには伏線がありました。実は、中学校3年生の時、担任のS先生から、「新藤は、人間改造をしないと、将来、誰からも嫌われる人間になってしまうぞ」と指摘されていたのでした。その時は、何故そのように言われたのか理解できませんでしたが、『山月記』の主人公李徴が述懐する、この2つの言葉に出会った時、「これこそが私の課題なのだ」と思い知ったのでした。浅ましい虎の姿に変わり果てた李徴が悔恨の思いを込めて友人に語る「臆病な自尊心」は、当時の私が抱えている問題だったのです。
   それ以来、「読書」は、私にとって、自分自身と向き合い、内面を見つめ、自分自身を高めるために欠くことのできない重要なものとなりました。今後も、自分という人間を深く知るためにも読書体験を積み重ねていきたいと考えています。

  図書館員からひとこと