今月の栞 2013年10月 森垣桂一先生 (作曲・音楽理論)

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  ブルノー・モンサンジャン 著
『ナディア・ブーランジェとの対話』
音楽之友社 1992
     私が初めて「完璧な音楽家 ミュジシアン・コンプレ」という言葉を知ったのは、三善晃先生が書かれたこの本の序文からでした。また私の恩師・矢代秋雄先生が亡くなった時、いつも先生が「ナディアの婆さん」と親しげに話していらっしゃったナディア・ブーランジェ女史の手紙が、仕事机にそっとおかれてありました。
   ナディア・ブーランジェ(1887?1979)はフォーレ、ラヴェル、ストラヴィンスキーと共に仕事をし、親交を結び、作曲家、指揮者、ピアニストとして活躍しました。しかし、ブーランジェが大きな業績を残したのは教師としてでした。パリ国立音楽院、エコール・ノルマル、アメリカ音楽院、ジュリアード音楽院等で精力的に教え、多くの偉大な音楽家たちを育てあげました。作曲家ではアーロン・コープランド、レナード・バーンスタイン、エリオット・カーター、ジャン・フランセ、アストル・ピアソラ、矢代秋雄等、演奏家ではディヌ・リパティ、イーゴル・マルケヴィチ、ダニエル・バレンボイム、ユーディ・メニューイン等です。当時彼女のもとには世界中から弟子が集まって来ました。  
   この本には、ブーランジェの教育法の秘密が示されています。そして、彼女の力強い言葉は「芸術家という聖なる職業への愛情・情熱・敬意、献身」を、私たちの中から引き出してくれます。著者ブルノー・モンサンジャンのすぐれた編集によって、芸術が「芸術」であった良き時代の息吹が伝わってきます。
   私にとって大切な一冊であるこの本を、私は若い音楽学生の皆さんに、是非読んでいただきたいと思います。

  図書館員からひとこと