今月の栞 2013年7月 江崎公子先生 (音楽教育学)

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  エーリヒ・ケストナー 作
『エーミールと探偵たち』
岩波書店 2000
     小学校2年生から3年生にかけて半年ほど病気のために学校へ行かない時期があった。家にTVもゲームもない時代で、本を片端から読んだ。日本昔話、イソップ童話、北欧神話、少年少女文学全集、歴史書等々である。父愛読の時代小説も読みおえた頃、堪りかねた母が「本は何回も読むものよ」と言った。「なるほど」と再び筋を覚えている本を手にした。
   結末を追ってせかされるように眼でみていた活字が2〜3回と繰り返す内に、イメージがふくらむ本と「もういいや」という本に分かれてきた。そのうち数十回よんでもあきない本がいくつか残ってきた。ケストナーの一連の著作、エミールシリーズと『飛ぶ教室』もその一つだった。登場人物のセリフまでほとんど暗記したころ、私が消化できない箇所がとても気になった。「フォン・ゲーテがいっている・・・・」フォン・ゲーテって誰だ?父の説明は通り一遍で、文中の法律顧問官の言いたいことと違う気がした。エミールの登場人物グスターフは「ラテン語の不規則動詞の4部合唱をしよう」といっているが、合唱に不規則動詞がどうなるのか?まったく理解できない。さらに『飛ぶ教室』の舞台であるギムナジウム寄宿舎の男の子達は、なぜ実科学校と歴史的戦争をするのかもわからない。
   今思えば、ドイツ文化を知らずにこの疑問はとけないのだが、そんな文化基盤をも乗り越えて、少年達の一人一人が活き活きとベルリンやバルト海の避暑地で日々を過ごしていることが大好きだった。高校生になってゲーテ全集を読んだが、わからなかった。国立音楽大学でラテン語を上級まで履修したが、4部合唱は経験しなかった。ドイツ教育史を早稲田大学で勉強し、やっと中等教育の在り方の違いが理解できた。わたしの疑問の根幹はいまでも変わってないのだと思う。出会ってしまったケストナーそしてすばらしき少年達。


  図書館員からひとこと