今月の栞 2013年1月 堀江志磨先生 (ピアノ)

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  ヴィクトール・E.フランクル [著]
『夜と霧』
みすず書房 2002
     この話はユダヤ人精神科医、ヴィクトール・フランクルが、第二次世界大戦の折に、ナチスのユダヤ人収容所に入れられていた時の過酷な体験を、自ら綴った本です・・・と言うと、皆さんは「恐い事が書いてある本」と思うかもしれません。しかし、そうではありません。
   明日の命が知れない極限状況に置かれた人々が、何に絶望し、何に意味を求め、何に希望を見いだすのかを、フランクルは、温かく、そして厳しいまなざして見届け、わかりやすい言葉で私たちに語りかけてきます。
   戦争のない平和な日本に私たちは生きていますが、思い惑う事はたくさんあります。漠然とした閉塞感に襲われたり、夢を諦めたくなったり、また、うまくいかなくて絶望する日もあることでしょう。しかし、そのような時でさえ、私たちには出来ることがあり、どんなに不幸だと思える瞬間にも生きていく意味があるという、そういう事が書かれた本なのです。

   私は学生時代に皆さんと同じ、この国立音楽大学に通いながら「夜と霧」を読みました。当時は文字を追っているだけの、ほとんど流し読みに近い読み方だったのだと思います。しかし、その後卒業して何回か手に取る機会があり、何年か前に新訳が出て、再び読み返しました。そのつど新しく感じ、考える事が湧いてきます。年を経るにつれて読み方も変わり、思い入れを強くする場所、感動する場所が変わり、そして様々な思いを与えてくれる、そんな本です。
   長い本ではありません。つい先頃、NHKの『100分de名著』という番組にも取り上げられました。そのテキストと合わせて読まれても面白いかもしれません。一度も読んだ事がない方は1回目を、読んだことがある方は2回目を、この機会にお勧めします。

  図書館員からひとこと