今月の栞 2012年11月 池田篤先生 (ジャズ)

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  ナット・ヘントフ 著
『ジャズ・カントリー』
晶文社 1997
     ジャズに興味を持ち始めた中学生の頃、読書があまり好きではなかった私のことを心配して、「これ面白いから読んでみたら?」と姉から渡されたのがこの本との出逢いである。その頃の我が家は、姉の友人や先輩達の溜まり場で、夜中になると煙草の煙とステレオから流れてくるジャズの響きが無性に格好よく感じられたものだった。
   著者ナット・ヘントフは、自身も音楽家であったことからミュージシャン達からの信頼も厚いジャズ評論家であるが、モダンジャズ真っ盛りのニューヨークを舞台に、トランペットを吹く白人少年の心の葛藤を描いた青春ストーリーを清々しく描いている。今回この執筆を依頼されたことをきっかけに、35年ぶりに実に懐かしく再読してみたが、登場人物のモデルとなっている実存したミュージシャン達のことや、当時の人種差別問題を含む時代背景を理解した上だと一層楽しむことができた。ジャズ入門者にはもちろん、ジャズ・ミュージシャンやベテランのジャズ・リスナーにとっても大いに楽しめてしまう小説というわけだ。
   話は戻り、この本を読み終えた中学生の私は、姉の目論見とは裏腹に読書やお勉強はそっちのけでますますジャズの世界にのめり込み、高校進学とともにアルトサックスを始め、さらにここ国立音大に進むこととなる。そしてこの主人公と同じようにいろいろな事と心の中で格闘しながら私はジャズ一筋の人生をずっと続けてきたのです。
  図書館員からひとこと