今月の栞 2012年9月 門脇郁子先生 (声楽)

KS00044


  斎藤孝 著
『身体感覚を取り戻す : 腰・ハラ文化の再生』
日本放送出版協会 2000
     皆さんは自分自身の身体に一本しっかりと背筋が通っていると言うことが出来ますか?あるいは「腰が据わっている」や「地に足が着いている」といった感覚をどのくらい実感できますか?

   この本では、日本の伝統的な身体文化を<腰(はら)文化>という言葉で表わし、失われつつある身体感覚をいかに取り戻し、21世紀の身体はどうあるべきかを論じています。
   「現在の日本人の身体に何が起こっているのか」という問いに、著者は「一言で言うならば<中心感覚>が失われているということになる」と述べています。中心感覚とは体の中心軸(体幹)を感じることですが、これは腰の構えの作り方に大きくかかわっています。
   しっかりと地に足がついており、その大地との繋がりの感覚が腰と肚につながっている。上半身の無駄な力は抜けていて状況の瞬時の変化に対して柔軟に対応できる構え―つまり自然体で立つこと―は我々声楽を学ぶものにとって最も大切な姿勢ではないでしょうか。
   腰と肚が決まっていれば背骨はその上に正しく据えられることになり、背筋は自然に伸びます。
   そして体と精神は結びついていると言われますが、これらを結びつける役割こそ息、すなわち呼吸なのです。

   私は以前より体に関することに興味がありましたが、迷ったり、余計なことを考えすぎる時に、基本に戻ることを思い出させてくれる本の一冊です。

  図書館員からひとこと