今月の栞 2012年5月 大津直規先生 (調律)

KS00038


  中村安希 著
『Beフラット』
亜紀書房 2011
     自分の考え方・生き方に影響を与えてくれるのは、自分がその著者と同じ時に生きていること、そして自分に方向性を見出すことを与えてくれる程に先を歩いて行く人たち。それは歴史家であり、哲学者、科学者、そしてミステリ、SF作家、コラムニスト。しかし今ではその多くが鬼籍に入ってしまい、読んできた本の多くが絶版になっていくのは残念なことです。出版されたその時代に生きて、読んで、考えて、今につながっています。私にとってリアルタイムで存在した本の多くは、しかし、これからの時代を生きていく人たちにとってはリアルタイムではないこと、「今」に重ね合わせたときに、どのような本・著者と出会うことができるのかと考えていたときに、この本と出会い一気に読み終えてしまいました。
   著者のことは第一作である「インパラの朝」(2009)で知ることができます。第二作の本書で興味を持ってこちらも読み始めましたが、もともとノンフィクション、ルポルタージュ本が苦手なのでこちらは数ページで挫折してしまいました。
   しかし「Be フラット」は、派遣・アルバイトとしての日常と、18人の国会議員へのインタビューで彼らと向き合って感じた疑問や希望そして絶望感を、交互に素直に表現しています。何なのかははっきりしないけれど、何か大きなものを心の中に残してくれた、私にとっては初めての読後感でした。
   余談ですが、シ・フラットではなく「Be動詞」と「flat」です。
 

  図書館員からひとこと