今月の栞 2012年5月 武田忠善先生 (クラリネット)

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  レベッカ・リシン 著
『時の終わりへ : メシアン・カルテットの物語』
アルファベータ 2008
     私は2009年11月19日に紀尾井ホールでデビュー30周年記念リサイタルをおこないましたが、プログラムを決めるにあたり、もう何年も前からメインの曲はメシアンの「世の終わりのための四重奏曲」(この本では時の終わりへと訳されていますが)と決めていました。そんな時にこの本が出版され紹介されて読んでみました。そしてずいぶんと影響を受けました。
   この曲は第二次世界大戦下ナチス・ドイツの捕虜収容所で作曲、初演されたわけですが、なぜこの組み合わせ (ピアノ、クラリネット、ヴァイオリン、チエロ) になったのか、初演した奏者の人間模様、メシアン自身の収容所体験など、たいへん興味深く書かれており、捕虜収容所の絶望的な中でどのようにしてこの曲ができたかということがよくわかります。戦後いろいろな人がこの名曲を演奏していますが、私の親友、パリ音楽院教授のミシェル・アリニョン氏が演奏にあたり実際にメシアン自身に聞いた話も書かれています。
   昨年3月11日の東日本大震災の時に我々音楽家は何ができるのか、何をすべきなのかずいぶんと考えさせられました。音楽することの意味さえ問われたような気がします。そんな時にこの本をもう一度読み返してみると、人間と音楽の関わりがあらためて大切なことがわかります、そしてこの曲をいつかまた演奏したいなと思いました。


  図書館員からひとこと