今月の栞 2012年2月 藤沢章彦先生 (教職科目)

KS00034


  梅棹忠夫 著
『文明の生態史観』
中央公論社 1998
     主として西洋音楽を学ぶ学生時代は、それ以外の音楽についてはどうしても後回しになったり、よく知らなかったりします。私自身もそうでしたが、大学4年生の頃テレビでウィーンフィルのメンバーによる弦楽四重奏を聴いたとき、彼らは自由に楽しく、日本人とは明らかに違う感性と表現で素晴らしい演奏をしていました。私たち日本人ではとても無理ではないかと失望しながら、これはなぜか、と疑問に思いました。その後、謎が解けた気がしたのがこの本です。
   今でこそ、日本の伝統音楽や諸民族の音楽の情報が豊富になり、求めればかなりの音や歴史、理論について見たり聴いたり、知ったりすることができるので、それぞれの特徴や背景、その音楽がそのようにそこにある理由も理解しやすくなりました。この本は、音楽についての詳しい解説ではなく、文化や文明が地球上で異なり、多様である事実と理由についての「考え方」を提示しているものです。そうか、世界は一つの考えや価値でできているのではない、地域と時代によってそれは多様であって、ヨーロッパとアジアではもとより、さらにそれぞれの中でも多様なのだと気づきました。ウィーンの弦楽四重奏は、モーツァルトと同じ土地で同じ景色を見て、同じ言語でほぼ変わらない生活をしている人が演奏していたのです。
   こうした考え方は、和辻哲郎「風土」(岩波文庫)にも見られます。これも一読をお勧めします。
   また、梅棹さんの著作では「知的生産の技術」(岩波新書)も有名です。これらの本を読むと1〜2階の景色から10階に登って見回したような違いを感じます。楽器練習の合間に、音楽の勉強に疲れた時にぜひどうぞ。



  図書館員からひとこと