今月の栞 2011年12月 蔭山真美子先生 (音楽療法)

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  宮沢賢治著
『新編銀河鉄道の夜』
新潮社 1989
     私は、幼い頃から宮沢賢治の作品が大好きです。ことばが紡ぎ出す独特のリズム、作品の根底に流れるメロディの哀しさ、ハーモニーの美しさ、どの作品も読み進むに従って、夜空の向こうから音楽が降り注いでくるような感覚に包まれます。
 「よだかの星」もそんな作品のひとつです。大人になった今あらためて読み返すと、このお話は単に音楽的であるだけでなく、作品の背景にある賢治の死生観や宗教観、精神世界についてあれやこれやと注釈をつけたくなるような一編であることに気付かされます。にもかかわらず、読み返すたびそんなことはどうでもよくなって涙が出てきてしまうのです。今回この原稿を書くにあたって、私はヨタカという鳥にどうしても会いたくなり、上野動物園を訪ねました。賢治のヨタカ(よだか)に寄せる思いを感じ取ってみたかったのです。ヨタカは園の中にある「夜の森」で、目を閉じてじっとしていました。まだら模様の茶色い体はお話にある通りたしかに地味ではありましたし、子どもたちは皆、あまり興味がないといった風にヨタカの部屋の前を通り過ぎていきます。私は、ガラスの向こうのヨタカを見つめながら、賢治がこのお話を通してこの世に存在する“命”の意味を問いかけるだけでなく、命に対する畏敬の念を私たちに示してくれていることを感じずにはいられませんでした。
 「そしてよだかの星は燃えつづけました。いつまでもいつまでも燃えつづけました。今でもまだ燃えています。」(p39より)ひょっとすると、この星は本当にカシオペア座のとなりにあって、でも、とても小さくひっそりと輝いていて、私たちの目には見えていないだけなのかもしれませんね。
 この文庫には、「よだかの星」のほか、タイトルにもなっている「銀河鉄道の夜」、「セロ弾きのゴーシュ」など、賢治の童話が14編収められています。巻末には「星めぐりの歌」(宮沢賢治作詞・作曲)の楽譜も載っています。表紙の絵(加山又造)も素敵です。


  図書館員からひとこと