今月の栞 2011年7月 清水康子先生 (文学)

KS00022

  ミシェル・ド・モンテーニュ著、 宮下志朗訳
『エセー. 1』
白水社 2005
     16世紀フランスの思想家モンテーニュのこの書物は簡単にわかりやすく解答だけを教えてくれる本ではありません。でも、人間とこの世界について深く考えてみたいときには、頼りになる話し相手になってくれます。古代ギリシア・ローマの賢人たちから自分と同時代の普通の人々までを親しく取り上げながら、たくさんの具体例を示して人間について世界について一緒に考えてくれるのです。
   私たちは今、多くの問題に直面しています。モンテーニュが生きていたのも困難な時代でした。生まれたのは自由に人間性の探求に挑むことのできるルネサンス・ユマニスムの良き時代で理想的な教育を受けます。しかし、公職について働くころには不穏な空気の流れる宗教戦争の時代になっていたのです。モンテーニュが書き綴っていった『エセー』はフランス語で「試み」の意味で、彼はさまざまなテーマについて書くことで自分の判断力の試みを重ねていきました。どこからも読めますが、まずは『エセー1』の「子供たちの教育について」がおすすめです。『エセー2』なら「人食い人種について」「孤独について」「ことばの空しさについて」、『エセー3』なら「酔っぱらうことについて」「書物について」「残酷さについて」はいかがでしょう。『エセー4』は全体が最長・最大の章となっています。誰にでも読みやすい新訳です。訳者の宮下さんは、16世紀フランスの大作家ラブレーの作品も新訳にしています(『エセー1』〜『エセー4』既刊4冊、刊行継続中)。

  図書館員からひとこと