今月の栞 2011年4月 宇佐美明子先生 (幼児教育学・図画工作)

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  皆本二三江著
『絵が語る男女の性差 : 幼児画から源氏物語絵巻まで』
東京書籍 1986
     この本とは、私が大学院を修了し、男性社会である美術界の中で迷いを抱えながら作家活動をしていた頃に出会いました。著者の皆本は現在84歳。芸大を卒業した後、子ども達の絵の指導をしていて男女児では表現に性差があることに気付きます。教育とは個性と向き合うことなのに、違う個性を持つ男女が同じように指導・評価されてはおかしいと悩みます。皆本はその疑問を持ち続け、日本やアジア、アフリカで収集した子ども達の自由画を研究し、その違いを学会などで発表したところ、フェミニストの女性や男性から「性差研究」は時代に逆行するとして糾弾されます。ところが当時の平等観は女性が男性のようになろうとしたものが多く、世界中の女児が描くお姫様の絵(ステレオタイプ画)を、描かせないようにする考え方「概念くずし」が普及していたのです。皆本は女性の表現を応援するために、国宝「源氏物語絵巻」を描いたのは宮廷に仕える女官達であると仮説をたて検証します。この絵巻は他と比較すると、優美さ華麗さでは群を抜いており女性文化の豊かさが表現されています。皆本が目指したものは、男女に優劣はなく、それぞれの美意識が正当に評価される時代を切り開くことでした。男性の価値観に影響され右往左往していた当時の私は、この一冊からたくさんの勇気と研究に対する誠実さを学んだのです。その後この本は戦後の国内外美術教育分野の名著25に選ばれており、続編『だれが源氏物語絵巻を描いたのか』(草思社)も出版されています。

  図書館員からひとこと