今月の栞 2011年1月 西原彰宏先生 (幼児教育)

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  ダグ・ハマーショルド〔著〕
『道しるべ』
みすず書房 1999
   この本は日記です。作者はスウェーデンの人で、外交官でした。1953年から1961年の間、国連事務総長としてスエズ動乱やコンゴの紛争の解決にあたりました。最後は飛行機事故によってアフリカで亡くなります。20代のときから50代半ばで亡くなるまで、約30年間にわたる彼の内面の省察をつづったのがこの日記です。
 私がこの本に出会ったのは、下宿生活をしていた高校生の時期だったと思います。勉強していい大学や社会的地位をめざすこと自体が卑しいことに感じられ、またつらくなっていた頃でした。この本の短い一節一節からきこえてくる、ハマーショルドの声と対話するようにして、かろうじて生きていたようにも思います。今手に取ってみると、意外にも昨日読んだかのようによく見知った節が数多くあります。読者の自我形成に、深いところで作用する本なのかもしれません。
 従って、学生の皆さんの誰にでもおすすめできる本かどうかわかりません。何のために生きているのかわからなくなっている人がいたら、一度手にとってみてほしい本なのです。神谷美恵子著作集3『こころの旅』の241ページにこの本に対する書評が載っています。最後に、その書評の1節を引いておきます。
 「ときには、きわめて人間らしく、不安や虚無や懐疑にうめきながら、しかもたえず至高のものを想い、(中略)透徹した思索をつづけた人。」
 
  図書館員からひとこと