今月の栞 2010年12月 田中延男先生 (教職科目・国語)

KS00007

  黒井千次著
『高く手を振る日』
新潮社 2010
   長寿の国、日本。高齢者をめぐる様々な課題が論議される中で、だれもが、いずれ自分
にも訪れる「老いの時代」をしっかりと見つめ、高齢者の心理やその生き方などについて理解を深めていくことが重要です。
 黒井千次氏は、昭和40年代から息長く活躍されている文学作家です。この「高く手を振る日」は、大学時代にゼミ仲間だった一組の男女が、50年の時を越え、老年になってから抱いた素直な愛をテーマとした小説です。
 私は、最近この本を読んでみました。単に男女の愛の姿を追うだけでなく、物語の展開を通して現代社会の状況や老人の心理を鋭く描いており、その筆の豊かさに驚かされます。
 特に、主人公が慣れない携帯電話を購入し、使い始める場面の描写は、すべての老人の心理を見抜いて書いたかのような見事さです。
 さあ、これからおよそ50年後、あなたはどのように変わっているでしょうか。そのころ、周りの人々にどのように接してほしいと願っているのでしょうか。青春時代の真っただ中にいるあなただからこそ、ぜひ読んでいただきたい小説です。
 
  図書館員からひとこと