今月の栞 2010年11月 山本英助先生 (トランペット)

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  松本清張著
『砂の器』(上下巻)
新潮社 2006
   小さい頃から無類の本好きだった。本に出てくる見知らぬ街や風景を地図帳のページから探し出すとその街に行って来たような気分を味わえた。小学生の頃は始業式の日に教科書をもらうとその日のうちに全ての科目を読破した。親が毎月購入していた「日本文学全集」(河出書房)も全て読んだが小学生には全く理解できない小説もあった。三島由紀夫か、谷崎潤一郎だったかを読んでいる時「これは子どもの読む本ではない。」と親に取り上げられたことがある。そして「少年少女世界文学全集」(講談社)という50巻からなる全集を買ってくれた。これは何度も繰り返して読んだ。特に「ロビンソン・クルーソー」や「海底二万哩」が好きだった。赤い表紙がとてもしっかりとしていて良い匂いがした。中学校の時は国語の教科書に出ていた小説の抜粋ではもの足りなくて文庫本を買ってもらって読んだ。高校時代は、松本清張を新潮文庫で全て読んだ。単行本を買える金は無かったので、新刊が文庫になるのを待ち遠しく思った。社会のどこにでも起きそうなありふれた事柄が大きな殺人事件や社会事件に発展していく小説の筋をワクワクしながら読んだ。なかでも「ゼロの焦点」「砂の器」はページがボロボロになるまで読み返した。最近、かつて読んだ小説のなかに出て来た北陸の街を初めて訪れた時、自分がとてもよく知っている街に再び来たような気がして嬉しかった。

 
  図書館員からひとこと