今月の栞 2010年11月 藤井喬梓先生 (音楽理論)

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  片山敏彦著
『片山敏彦詩と散文』
小沢書店 1989
   片山敏彦。この名前は、私にとって特別な輝きに包まれて見えます。片山は1898年に高知に生まれ、1961年に東京で没した詩人・文学者であり、ヘッセ、リルケ、ロマン・ロラン等、ヨーロッパの詩文学の紹介者としても著名な存在でした。今日、彼の名は、ほとんど忘れ去られた感がありますが、私は長年にわたって、彼が残したものに勇気づけられ、人生の指針を与えられて来ました。
 「片山敏彦 詩と散文」は、生前片山に私淑した詩人でフランス文学者の清水茂氏が纏めたものですが、この人物の輪郭を知る上で大変良い本だと思います。清水氏はこの本の解説に「彼はミスティックな体験をその生涯の仕事の中心にもつ詩人であった。つまり、存在の内部には、内面的でありながら同時に無限に自己を超えた何ものかがあることを信じ、個としての己の人間的な営みを通じて、この超越的な何ものかを顕かにし、讃め、うたうことを、自ら生きることの第一の意義とした詩人であった。」と書いておられますが、この詩人の本質をとらえた言葉だと思います。
 今日のあまりにも皮相的な世相に抗して、私たちは自分の内面を守り育てなければなりません。 そのためには、良い文学や芸術が力になります。ロマン・ロラン、ゲーテ、ベートーヴェン、バッハ・・等々の芸術作品は確かに永遠の空気を感じさせ、私たちさえ望めば、常に人生の誠実な伴侶になってくれるでしょう。

 
  図書館員からひとこと