音楽研究 27 (2015) 請求記号 = [PB102D 27]

著作者 青山 真以子 ( AOYAMA Maiko )
タイトル 3歳児における音楽的行動の特徴に関する研究 : 人との関わりに焦点をあてて
( A Study of the Characteristics of Musical Behavior in Early Childhood : Focused on 3-year-old Children’s Interactions with Others )
ページ 83-90
本文の言語 日本語
抄録  筆者は既報(2014)で、2歳児クラスにおける音楽的行動の特徴について報告した。ここでは、どのような動機に誘発されて音楽的行動が生起したかという観点から分析を行った。その結果2歳児クラスの幼児は「模倣」によって他者に応答し、言葉や音声そのものの面白さに触発されて音楽的行動を生み出していた。また、自己をアピールするために音楽的行動を用いていた(p.88)。
 2歳児に続く3歳児の音楽的行動の特徴に関する研究も報告されている(大畑1983;藤田2002;松澤2000)。3歳児の音楽的行動は、周囲の友だちとのやりとりが始められるようになり、幼児から発信したり、幼児同士で楽しんでいる姿が報告されている。しかしながら、これらの音楽的行動がどのような動機によって生起し、発展したかという分析はまだない。そこで本稿では、熊倉(1999)の動機の観点をよりどころに、3歳児の人との関わりにみられる音楽的行動の特徴について検討したい。
 幼児の音楽的行動を抽出するにあたって、熊倉(1999)の論考を拠り所とした。熊倉は、5歳児の広範な音楽的行動を網羅し検討を行い、音楽的行動には次の5点が含まれるとしている。
(1)既成の曲や即興の旋律を歌ったり、演奏する行動 (2)音の響きを生むことを意図した行動 (3)既成の曲や音の響き、リズムに誘発された行動 (4)言語活動から発展してリズミカルな繰り返しの見られる行動 (5)リズミカルな身体運動、音響が介在しない場合でも音楽が想起された行動。以上の熊倉の論点に依拠して、3歳児の音楽的行動を収集した。
  観察は、東京都西部にある私立K保育園で行った。観察期間は、2013年4月19日〜同年9月25日の4ヶ月間に亘って、月2〜4回(延べ16日間)観察した。観察者(筆者)は、保育へ参加しながら観察記録を採取した。観察記録のデータ分析において偏りを避けるために、第三者による評定を実施した。観察事例の分析にあたっては、熊倉(1999)の研究を参考にした。熊倉は、音楽的行動が生起される動機を13に分類した。この分類を用いた評定結果を基に、各事例の動機を明確にして音楽的行動の特徴を読み取るようにした。
 3歳児クラスの人との関わりにおける音楽的行動の特徴は、以下の3点にまとめられた。
 第一は、慣習的な言葉(定型的な言葉)の唱えである。第二は、幼児自身が発信者になるという点である。3歳児の事例では身の回りの様々な刺激から音楽的行動を生起させ、幼児自身が発信者となっている事例がみられた。第三に、幼児同士で音楽的行動を共有していたということである。幼児が共に唱えることによって興奮が増幅されたり、幼児自身がピッチやリズムなどの操作を行うという点も特徴的であった。特に、言葉を否定形にしたり(言葉の置換)、その変化を見逃さない等の音楽的行動に敏感である姿もみられた。
 今後も、2歳児、3歳児の事例の分析を通して、幼児の音楽的行動について検討を重ねていきたい。