音楽研究 26 (2014) 請求記号 = [PB102D 26]

著作者 青山 真以子 ( AOYAMA Maiko )
タイトル 2歳児における音楽的行動の特徴に関する研究 : 人との関わりに焦点をあてて
The Characteristics of Musical Behavior in Early Childhood : A Study of 2-year-old Children’s Interactions with Others
ページ 81-89
本文の言語 日本語
抄録  乳幼児の生活や遊びの中にみられる音楽的行動に関して多くの報告がある(藤田 1986,1988,1989,1991,1993,1996,1998,2000,2001,2002;岡林 1994,2003,2006,2007,2009,2010,2011;飯塚 1997,1998,1999,2001,2004;矢部 2011;岡本 1998,1999,2003)。これらの研究を分類すると次のような特徴が見られた。第1の特徴は、乳幼児が日本語を唱える姿や、既成の旋律や即興的な旋律を歌う姿を通して音楽的行動の特徴を明らかにしようとする研究である。それは、乳幼児の音楽的行動の特徴を“うたう”行為と“唱える”行為から観ようとするものである。“唱え”は日常的な言語活動や会話と異なり、何らかの操作が加えられている。つまり、①リズムなどの時間的秩序や拍節感の操作、②ピッチや抑揚など音高への操作、③呼吸を整えたり合わせるという操作、④動作を伴う操作である。第2の特徴は、生活や文化とのかかわりから生起される行動を拠り所として、音楽的行動の本質を捉えようとするものが多い。第3の特徴は、音楽的行動を歌唱・音声・言葉といったファクターを拠り所にして観察した手法を用いているという点が挙げられる。
 これらの先行研究から、2歳頃は活発な言語活動と共に音楽的行動が拡大し、続く3歳頃には友だちとのやりとりが始められることが明らかである。しかし、これらの年齢を対象とした研究において人との関わりに焦点をあてた研究は少ない。そこで、本稿では2歳児を観察し、友だちや保育者との関わり合いから生まれる音楽的行動の特徴について検討した。
 観察事例の分析にあたっては、熊倉(1999)の研究を参考にした。熊倉は、5歳児が音楽的行動を生起する動機を13に分類している。ここでは、この分類を拠り所にして2歳児の観察を行った。
 観察は、東京都西部にある私立K保育園で行った。観察期間は、2013年4月17日〜同年8月1日まで、延べ10日間観察した。観察者(筆者)は、保育へ参加しながら観察記録を採取した。採取した記録は、前述の分類に従って整理した。そして、採取した記録の客観性を担保するために、第三者による評定を行った上で、事例の考察を行った。
 事例をみてみると、総じて2歳児は「模倣」によって他者に応答し、特に言葉や音声の面白さに導かれて表現を生みだしていた。また、自己をアピールするために音楽的行動を用いたり、周囲の人と関わりを持とうとする姿も観察された。しかし、発語の状況は未だ個人差が大きく、音楽的行動の内容に差異がみられた。これに関して岡林(2010:197)は、「言葉や動作を音楽的にまとめる行為は、それぞれの言語の発達段階よりも少し遅れて現れる」と指摘しているように、2歳児では未だ言語の延長線上としての音楽的行動が特徴的に観られた。
 今後は、より精細な分析を行うために観察調査を継続し、人との関わりにみられる音楽的行動の特徴について検討していきたい。加えて、3歳児の観察調査を通して、2〜3歳の変化についても追跡したい。